金色のガッシュベル!!〜メカバルカンの来襲〜

本日は、恒例の映画版ガッシュ話に徹しますので、興味ない方はスルーしましょう。


とうわけで、観にいってまいりました。今回渋谷は舞台挨拶がないので、初日の初回に誰もいなかったらどうしよう・・・とか失礼なことを考えましたが、ちゃんと親子連れの観客がたくさんいてひと安心(それでもかなり空いてたけど)。
結論から言いましょう。
もし観にいくのを迷っている人がいたら、ぜひ今!すぐに!映画館に足を運ぶことをお勧めします。
ガッシュという作品が好きな人だったら、特にガッシュの第一話が好きだったら、絶対この映画はツボにはまります。これはそういう映画ですから。なぜ「メカバルカン」が主役なのかということも納得できます。
ホント久しぶりでしたよ、気が付いたら涙が頬を伝っていたという経験は。もう、最後は涙ボロボロで、終了後すぐに化粧室に飛び込みました。
ただし、昨年がストレートな「東映マンガ」であったのに比べ、今回は色々とマニアックなので、対象年齢は少し上に設定されています。それでも笑えるし、泣けるし、感動します。周りの子供たちも、お父さんお母さんたちもちゃんと笑ってましたし。その後冷蔵庫を買う予定がなかったら、間違いなくもう一度観たでしょう。いえ、後5、6回は観たい。年間パスポートがあったら絶対買います!!買った冷蔵庫をお持ち帰りしそうになったくらい感動しました!!!
ちなみに、多くの方が一番気になっているであろう、『チチもげ』もちゃんとあります。


というわけで、イレギュラーですが、ネタバレになるような細かい感想は後ほど書きます。今はまだ余韻に浸っていたいので。


はい。戻ってまいりました。以下ガッシュ映画版の感想。芋焼酎「魔界への誘い」を飲みながら書きました。
思いっきりネタバレになるので、知りたくない方は見ないようにしましょう。



「劇場版金色のガッシュベル!!〜メカバルカンの来襲〜」
次々に量産されていく不気味なメカバルカン。それを操る謎の人物。一方、林間学校に向かう清麿と、それを追いかけるガッシュ。ふたりの追いかけっこでOPが始まり、ティオ組、キャンチョメ組、ウマゴン組の様子も次々に映し出される(キャンチョメとフォルゴレが出てくるだけで劇場に笑いが起こってました。オイシイ役回りだ)。
一気に引き込まれる導入部から始まるこの映画。昨年の映画版に比べた第一印象は、マニアックだなぁというものでした。とにかく画面の作り方が丁寧で作画も色彩も美しい。光の使い方にも細やかな配慮が見られます。繰り返し登場するひまわりの黄色が印象的。レイアウトは奥行きを感じさせ、人物がフレームに入りきらず、表情をわざと見せないようにしている場面が多い。特に、清麿と今回のゲストキャラクターであるDr.M2との会話ではそれが顕著でした。終盤、ガッシュの真意を知って清麿が立ち上がる場面など、キャラクターの表情は見る人の想像に委ねられています。逆にこういったところは、小さな子相手の映画としては少々不親切かもしれません。
また、今回の主役、バルカンも詳細に描き込まれています。メカバルカンの重量感のみならず、通常のバルカン300もきちんと描写されていて、映画が始まった直後、ガッシュの手の中でクローズアップされたバルカンには、清麿が適当に貼ったであろうセロテープまでくっきり見えます。そして、演出の「間」、会話の「間」、ギャグ場面の「間」と、その意図を表現するための、過不足ない「間」に唸らされます。
脚本は、笑いと感動のバランスが非常によく、ガッシュと清麿の絆を中心とした構成は、ちょっと綺麗過ぎるくらい見事にラストの清麿の言葉へと着地してます。結局これは、ガッシュという作品の核を成す、ガッシュと清麿の関係の物語です。ガッシュがバルカンに感じる友情は、清麿と育んだ絆の象徴だった。清麿とガッシュガッシュとバルカン。バルカンとM2。M2と清麿。彼らの関係をつないでいるのは、この作品の基調である、天の配剤ともいうべきガッシュと清麿の出会い。四代目がガッシュの言葉に反応したのは、四代目の原型となったバルカンロボが、未来の清麿がガッシュへの想いを込めて作ったものであったから。そしてM2の清麿への執着は、清麿の頭脳に対してというより、ガッシュと清麿の絆に対してだった。そのM2の手をとって導けるようになった清麿の姿もまた、ガッシュとの出会いがもたらしたもの。コメディ要素であるはずの清麿の林間学校への執拗なこだわりにも、ちゃんと意味をもたせています。
M2の姿は、もしかしたらありえたかもしれない、清麿の孤独な未来でしょう。ガッシュに出会わなかった清麿の姿。だからこそ、Dr.M2というキャラクターはハイテンションでありながらどこか哀愁を帯びているし、彼と清麿との会話では、空回りしているM2の姿がアイロニーを感じさせ、切なさが漂うのでしょう(千葉繁の起用は安直ですが、実に上手くはまってます)。ちなみに、清麿とM2の会話が、メカバルカンと楽しそうに街を練り歩くガッシュの姿にボイスオーバーしているのも上手い処理でした。大人は彼らの会話に耳を傾け、子供たちはガッシュたちの姿を楽しむことができる。ちゃんと、それぞれの観客に配慮されています(実際、この場面のガッシュを見て、子供たちは喜んでいました)。
そして、ティオ組、キャンチョメ組、ウマゴン組ですが、前作が戦闘の解説役に徹したいたのに比べ、出番は少ないものの、彼らには彼らでなければ果たせない役割が与えられています。この映画では、彼らのみならずガッシュでさえ、呪文は最後の最後まで使いません。そして、彼らが術を使うのは、誰かを傷つけるためではなく、救う時なのです(彼らそれぞれの特性を活かしたその合わせ技に関する博士の論理は強引ですけどね)。ティオ、キャンチョメ、ウマゴンがガッシュとともにメカバルカンと遊んでいる姿には、実に温かく、優しいまなざしが注がれています。ガッシュを信じて加勢するティオ、笑いを誘う情けなさの中でもがんばるキャンチョメ、そしていざという時頼りになるウマゴンともに、おざなりではなく、短い出演シーンながらちゃんと彼らの必要性が感じられます。まあ欲を言えば、彼らのパートナーたちにも同じくらいの描写が欲しかったところですが、でもこれだけでも十分満足できました。


私としては文句のつけようのない出来ですが、ガッシュという作品をあまりよく知らない人、そして小さな子供たちにとっては不親切な仕上がりかもしれません。単純に、「邪悪な敵」とのバトルを見たいと思っている人にも不満が残る出来でしょう。でも、ガッシュ・ファンに対しての贈り物として、私は最高に美味しくいただきました。
心から、スタッフ、キャストに、ありがとう、と言いたいです。